近畿大学工学部 産学官連携推進協力会

AIを使用した原料選別技術を共同開発
〜冷凍食品の原料品質が飛躍的に向上〜

近畿大学工学部×株式会社ニチレイフーズ

  1. AIを使用して冷凍食品の原料選別技術を共同で開発
  2. 共同開発した技術により従来比で夾雑物除去率が約1.5倍、処理スピードが約4倍に
  3. 冷凍食品原料の品質保証力・生産性の向上や労働環境の改善、人手不足の対応、環境負荷の低減に繋がった

株式会社ニチレイフーズでは冷凍食品の原料受け入れ時、金属探知、X線、近赤外線、光学・色彩などの選別技術を活用して原料の品質保持・管理をしていましたが、不定形な原料や混入している夾雑(食物食材由来の通常食用としない部位で、鶏肉であれば骨、羽根など、トウモロコシであれば皮、ひげなどを指す)の位置や角度などにより、判別の精度が下がるため、選別後に人の手や目視による検品を行う必要がありました。特に鶏肉原料選別では、3大夾雑物である「硬骨」「羽根」「血合い」をいかに取り除くかがポイントでした。「硬骨」については、一般的にX線により選別技術が確立されていますが、「羽根」「血合い」の除去については全量を人の手や目視で対応せざるを得ませんでした。そのため、作業者の負担が大きく、この方法だけでは判別しづらい検査もありました。

このような背景から、近畿大学工学部 電子情報工学科 竹田 史章 教授と株式会社ニチレイフーズは、ニチレイフーズの工場で使用する原料を人工知能(AI)で選別する技術を共同で開発しました。まず、原料を撮影し、その画像の夾雑物部分を照明技術・撮影技術・画像処理技術の組み合わせにより強調します。次に、その強調された画像を特殊な方法で数値情報に置き換え、事前に学習させておいた大量のデータと、画像から置き換えた数値情報とをマッチングさせ、選別をおこないます。

この技術を導入することで、従来比で夾雑物除去率が約1.5倍、処理スピードが約4倍となりました。また、原料は元より、製造工程内および完成品での検査へも応用が可能になり、ニチレイフーズ商品に使用する原料の品質保証力が格段に向上するとともに、生産性の向上、労働環境の改善、人手不足の対応、環境負荷の低減などにも繋がりました。また、この技術は経験豊かな作業者のスキルを記憶させることで職人技の伝承が容易に可能となり、人の手の感覚や目を超える、つまり五感を超える精度を持つことが可能となるため、完全自動化にも繋がると期待されています。

冷凍食品用原料(鶏肉)画像
(左)良品(右)不良品(血合いが入ったもの)

「チョイスゲーム」を用いた社会人基礎力向上プログラム開発の取り組み

近畿大学工学部×一般社団法人営業ひと研究所

  1. 「チョイスゲーム」を活用し学生や社会人の「社会人基礎力」を測定
  2. 社会人基礎力向上度を統計的手法で評価するソフトを開発
  3. 機械学習を用いて社会人基礎力向上診断支援プログラムの開発をめざす

高学歴化が進む中、職業と自らの人生との関係について自覚のないまま就職し、短期間で離職や転職をする若者が増えてきています。そのため、若者の勤労観や職業観を育成するキャリア教育において、現実の職業世界についての理解を深め、職業世界への適応の前提となる社会人基礎力を身につけることが課題となっています。

そこで、近畿大学工学部では、一般社団法人営業ひと研究所 瀬尾 誠 代表が考案した「チョイスゲーム」(カードゲームを使って職業擬似体験をする抽出教育プログラム)を活用し、講義の中で、学生が職業擬似体験を行い、多様な意見交換や、グループ討議を通して社会人基礎力の向上を図る取り組みを行っています。その中で、情報学科 片岡 隆之 准教授らは、「チョイスゲーム」実施前と実施後に、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」などの社会人基礎力12要素についてアンケートを行い、社会人基礎力向上度を統計的に評価するソフトを開発しました。現在、この取り組みは学生だけでなく、企業の社員研修における人材育成にも応用しています。

今後は、これらの評価データを蓄積し、機械学習を用いて社会人基礎力の各要素についての因果関係を明確化、社会人基礎力を客観的に測定する社会人基礎力向上診断支援プログラムの開発をめざしています。

チョイスゲームのイメージ画像

チョイスゲーム例題

古民家を活用した地域活性化の取組み

「近畿大学工学部×広島県福富町古民家『星降るテラス』プロジェクト」

  1. 福富町で築100年を超える空き家を地域住民や学生が一体となって改修
  2. 移住促進や情報発信、日本文化や田舎暮らしが体験できる場として活用
  3. 移住・定住を呼び込むモデルケースとしてアピール活動に貢献

近畿大学工学部広島キャンパスがある東広島市は、広島市の東に位置し、複数の大学のキャンパスが集まる学園都市です。近年めざましい発展を遂げ、市中心部では人口が増加していますが、郊外エリアでは農村部地域の空き家対策や県外や市外からの移住定住をどう促進していくか、また今後、東広島市全体としてどのようなまちづくりを行っていくかが課題となっています。

このような背景の中、建築学科の谷川 大輔 准教授は、2016年に東広島市の中山間地域にある福富町に自らが移住するため、築100年を超える空き家を購入しました。自身は隣接地に家を建て、古民家の母屋を福富町の地域活性化に活用できないか地域住民とのワークショップで話し合いを重ねました。2年間空き家だったこの古民家は、「星降るテラス」と名づけられ、福富町への移住促進や情報発信、日本文化や田舎暮らし体験ができる場として活用することとし、「近畿大学×広島県福富町古民家『星降るテラス』プロジェクト」として地域の人たちや研究室の学生も改修作業に参加しながらプロジェクトをすすめました。

広島県の「移住・定住のモデル地区」となっている福富町でのこの取り組みに、広島県や東広島市からも移住につながる事業として補助金を受けるとともに、クラウドファンディングで資金を集め、家屋の改修や、土間・かまど・囲炉裏などを再建しました。築100年を超える古民家は学生にとっても“生きた教材”となり、日本の伝統的民家の様式、在来工法を学べるなど、建築やまちづくりを実践できる有意義な活動の場となっています。

この地域住民一体となった取り組みは、移住・定住のモデルケースとして、広島県や東広島市が移住者を呼び込むためのアピール活動にも貢献しています。

2017年5月に第一期工事が完成した「星降るテラス」では、現在様々なイベントが開催され、地域と連携して新しいまちづくりに取り組んでいます。また、海外からも留学生を受け入れてワークショップを開催し、福富町から「日本の田舎暮らしの良さ」を国内外へ発信しています。

今後は、現在主に伝統的民家に用いられている東広島特有の材料や工法を現代建築にも応用できるよう研究を進め、都市部と中山間地域が融合して発展できるようなまちづくりの形をめざしています。

近畿大学工学部開発の特許技術を活用した漆喰 「瀬戸漆喰」で土壁の補修をする様題

技術者を対象としたリカレント教育の取組み

「リカレント教育」は義務教育や基礎教育を終えて社会人になってからも、必要とすれば学び直すことができる教育システムです。社会人経験を経てからのリカレント教育は、教育を受ける目的や対象が明確で、学習効果による自己成長がスキルアップや生産性向上など仕事に直結するメリットがあり、働き方改革や人づくり革命の中でも重要施策のひとつとされ、現在注目を集めています。

近畿大学工学部産学連携推進協力会では2008年より、工学部教員が、企業の技術者を対象に専門的な知識の学び直しのための講座を行う「社会人リカレント講座」を開催しています。年に数回、テーマを決めて近畿大学工学部広島キャンパスにて開催していますが、2018年度より会員企業を対象に、大学教員が企業に出向いて社内研修の一環としてリカレント講座を行う取り組みも行っています。

地元企業等と連携協定を締結

近畿大学工学部では様々な地元企業や公的機関、大学等と連携協定を締結しています。地域産業界との連携強化を図り、本学の教育力・研究力を高め、地域社会に広く還元することをめざしています。

主な連携協定締結先

株式会社もみじ銀行、株式会社広島銀行、広島大学、株式会社サタケ、マツダ株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所 他
(企業名等は締結順)

広島銀行・もみじ銀行の寄附講座

2008年に広島銀行・もみじ銀行との間で 産学連携に関する包括協定を締結し、2009年度から良好の寄附講座(広島銀行「起業 と経営」・もみじ銀行「組織活動と情報システム」を開講しています。

マツダとの包括的研究協力協定

2012年、マツダ株式会社との間に包括 的研究協力協定を締結。次世代自動車産業の技術基盤を築き、複数の共同研究を推進するとともに、研究を通じて人材育成を図っていきます。

お問い合わせ

近畿大学工学部 産学官連携推進協力会

近畿大学工学部産学官連携推進協力会 事務局
(近畿大学次世代基盤技術研究所 社会連携センター)

〒739-2116
広島県東広島市高屋うめの辺1番
(近畿大学工学部広島キャンパス内)
TEL:(082)434-7005
FAX:(082)434-7020
E-MAIL:riit@hiro.kindai.ac.jp